写真の中の学習机

※以下は、拙著旧ホームページのテクスト再録([ウェブ茶房Utaro]2010年12月7日付「写真の中の学習机」より)。

 家族の長い歴史を断片的に綴ったフォト・アルバム(ほぼ99%父が写した)は、私が幼少の頃からきちんとネガと共に整理されていて、体系化されていた。我が家では昔、銀塩カメラによる撮影はアウトドアの記念写真かスナップに限定され、高価なフィルムの消費は家計の事情でできるだけ避けるよう、冗談交じりの暗黙のルールがあった。特に飼い犬を撮る際は、「見栄えの良い」写真を撮るよう言及され、ただ単に「寝ている姿」を撮ることはほぼ厳禁に等しかった。

 そういった観点から、フォト・アルバムに整理され収まっている写真は、「見栄えの良い写真」だけであり、そうでない写真はプリントされていないか、あるいはネガを保管する箱の中にまとめて「隠して」あった。長年、フォト・アルバムに見慣れていると、「見栄えの良い」写真の方はだいたいどんな写真が収まっているか記憶に残っているものだが、一方の「隠して」ある写真の方はほとんど散見する機会がなく、記憶に残っていない。
 近年、このフォト・アルバムの一部のネガをデジタル・アーカイブした際、フォト・アルバムの中にはない、見栄えの悪い写真として処理されたカットが多く発見されて、個人的には頗る好奇心を掻き立てられ面白かった。その大部分が室内撮影のもので、おおむね露出不足の理由から「隠して」あったのだと思われる。

 これも「隠して」――長年隠蔽されて――あった写真の一つである。小学校低学年の頃の私自身が被写体となっている写真で、東側の窓に据えられていた学習机の前で撮られたスナップ。撮影者不明。1981年(昭和56年)前後の頃であるが、確かに、これをフォト・アルバムの中に収める気にはなれない。
 故に貴重な写真であると思った。
 写真はその当時の生活を詳らかにする効能があるが、ここでの写真では、学習机の上部の本棚に並べられたいくつかの書物がどうにかこうにか目視できるからだ。

 子供の頃、どんな本を愛読していたか。

 その答えの一部をこの写真が示している。机の上は物が散乱していて、とてもここで勉強をしていた、宿題を片付けていた、とは思えないのだが、忘却していた記憶が呼び戻されつつ、本棚に載っている本のタイトルがなんとなくわかってくる。

 忘れかけていた切手関連の本。

 そのうちの一つが、小学館コロタン文庫の『切手全百科』(監修・平岩道夫)であると思われる。思えば、その頃のコロタン文庫全般は特に愛読していた記憶がある。行きつけの書店の、児童書コーナーでは、ポプラ社の江戸川乱歩シリーズや伝記文庫シリーズに対抗してコロタン文庫シリーズが多数占拠されていた。特に円谷プロのウルトラマン全集云々がバラエティに富んでいた。

 閑話休題。本棚にある黄色で目立つのは、おそらく教育科学系のフォトブックで、残念ながらタイトルは思い出せない。右側の方にある“まんが名コーチ”というタイトルは判別できる。が、その他の本はどうもよく見えない。“○○のふしぎ”と読める本があるが、○○が“からだ”か“にんげん”ではないかと思う。さらに手に持っている本はなかなか分厚いが、開いたページがマンガのように見え、一体何の本か皆目見当が付かない。

 ともかく、こうして写真の助力により、それらの本の現物を入手することも可能である。尤も学習机には載っていない本においても、記憶の範疇から多く切手関連の本があったことなどを思い出し、我が学生時代の「愛読小史」を形成する手がかりとなり得る。しばし写真を睨みつつ、その思い出に浸りながら、あの本が何であったかを探ることにしよう。

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