愛蘭土紀行

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年12月26日付「愛蘭土紀行」より)。

 ジョイスの『若い藝術家の肖像』あるいは『ユリシーズ』繋がりで先々月あたりから本を開き始めた、司馬遼太郎著[街道をゆく]シリーズの30、『愛蘭土紀行Ⅰ』。

 “アイリッシュ・ウィスキー”の記述があるあたりで本当にウィスキーが飲みたくなり、家にあった“トリス”で我慢しましたが、司馬さんは、

《アイルランドの泥炭の煙がくろっぽくしみこんでいるような味》

 と述べていて、これがまた飲んでいないのに飲んで酩酊した気分になるほどの修辞。

 アイリッシュ・ウィスキーとはどんなものだろうと、某ショッピングサイトで検索したところ、けっこうな種類がある(購入できる)ことに驚きました。タラモアだの、カネマラだの、ジェムソンだの、ブラックブッシュだの。それらのラベルが少々田舎っぽいのがいかにもアイリッシュといった感じがして、機会があれば飲んでみたいと思いました。

 司馬さんの[街道をゆく]シリーズは20代の頃に耽読しましたが、私の書棚では必ずしもこの膨大なシリーズの文庫本が取りやすく並んでおらず、むしろあっちこっちバラバラに挟んであったので、自分がどれを購入して読んだかを忘れることがあり、一度リストアップしておこうと、ワープロでリストを作成し、買って読んだ本をチェックしていったのです。

 ところがしばらくしてそのリストがどこかへ消えてしまった――。

 書棚を整理してシリーズを順列に並べるのも面倒で、ほったらかしにしていたのですが、つい先日、そのリストが机の引き出しの奥から出てきた。

 少なくともこれがあれば同じ本を二度買いすることはなくなるので見つかってほっとしています。

*

 読書に耽っていると、その中で触れられている文学や書籍も欲しくなってしまうのが常。

 《『ユリシーズ』という題は、いうまでもなく、ギリシア神話のなかの英雄漂泊譚からとられている。

 ホメロス(紀元前800年ごろ)が神話に取材して書いた叙情詩の題は『オデュッセイア』である。その主人公である漂泊の英雄オデュッセウスとはギリシア語で、その英語よみがユリシーズであることはいうまでもない。

 ところで、故伊藤整氏が1969年に『ジョイス』(研究社)という本を編著して、いまも版をかさねている。そのなかで、ジョイスはじつはホメロスの原著を読んだのではなく、少年用の読みものとして書きなおされた『ユリシーズの放浪』を読んだのだという。それで十分この叙情詩を賛美し、さらにはイナズマに打たれたような啓示をうけた。その少年読物『ユリシーズの放浪』の筆者が、さきにとりあげたイギリスの随筆家チャールズ・ラムだった》
(『愛蘭土紀行Ⅰ』より引用)

 ということで伊藤整著『ジョイス』とチャールズ・ラム著『エリア随筆』を買い求めました。今年2011年のベストセラー・ランキングにのぼるような書籍とはまったく無縁、別世界の文学の蒸留と醗酵を楽しんで来年に繋げていくつもりです。

※「再び『愛蘭土紀行』」の稿はこちら

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