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4月, 2005の投稿を表示しています

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宮坂静生氏の『母なる地貌』

岩波PR誌『図書』2月号掲載の随筆で俳人・宮坂静生氏の「母なる地貌」を読んだ。最初は何気なく読み始めたのだけれど、これは、と感極まった。言葉としての感動がそこにあったのだ。私は日本人として、その随筆に鏤められた日本語の繊細な感度や質感、日本の国土や歴史との複層的な絡み合いに酩酊し、しばし体を震わせながらこの随筆を読み返さざるを得なかった。たいへん美しい詩情豊かな文章である。 §
 「母なる地貌」。ここに記してある主題をより良く味わうために、一旦は、自前で用意した日本地図を机上に開くべきだ。  日本という国土の、その地形地理の具合の粛々たる浪漫あるいは情念に身を委ねることは、文学を味わうことと密接な関係にある。そう思われないのであれば、日本語の本質的な美しさや情理のきらめき、思慕の哀感を決して味わうことはできないであろう。私が用意したのは平凡社『世界大百科事典』の日本地図である。[日本の周辺・海流]という区分で日本列島全体を眺めてみた。しばし時間を忘れて見入る――。むろん、中国大陸や朝鮮半島との海洋を隔てた“一連なり”の、その悠久なる蜜月にも、浪漫や情念として込み上げてくるものがある。
 まずは北緯40度の男鹿半島の位置を視認する。そこは日本海の東側である。序で、北緯30度の屋久島(鹿児島県の大隅諸島)と中之島(鹿児島県のトカラ列島)の位置を見る。こちらは東シナ海の東側。北緯40度より北は冬が長く、奄美大島から沖縄諸島より南は夏が長いと、宮坂氏はこの随筆の冒頭で述べている。  次に、地図の[長崎県]の区分を開く。五島列島の福江島の、北西に突き出た三井楽半島。そこにある柏崎の港。《最澄や空海ら遣唐使が日本を離れる最後に風待ちした港》と称した宮坂氏は、そこを《茫々たる》と表現した東シナ海の性格を叙情的にとらえ、海の果て――強いて言えば遣唐使の難破船――に思いを馳せる。《茫々たる》とは、広辞苑によると、「ひろくはるかな」さまなこと、「とりとめのない」さまなこと。しかしそれ以外にもこの言葉からは、一抹の暗さや不穏さが感じられてならない。
 ところで、「地貌」(ちぼう)とはどういう意味か。宮坂氏は「母なる地貌」の中でこう書いている。 《風土ということばは格好が良すぎる。どこでも通用する景観を指すだけに個別の土地が抱える哀感が伝わらない。むしろそこにしかない人間の暮らしを捉…

愛・地球博―ヨルダン館

※以下は、拙著旧ホームページのテクスト再録([ウェブ茶房Utaro]2005年4月8日付「愛・地球博―ヨルダン館」より)。
【浮遊する海】
死海は死すのか?
 ヨルダン館での「沈まない」体験。イスラムの国、ヨルダン・ハシミテ王国の死海は、危機に瀕しているという。湖面は海面下397メートル、南北に長さ81キロメートル、幅17キロメートル、面積1020平方キロメートル、水深146メートル、その塩分は25%。ヨルダン川の水量減少により、死海の水面が年々低下、まさにその死海は、死するのだろうか。

愛・地球博―スペイン館とフランス館

※以下は、拙著旧ホームページのテクスト再録([ウェブ茶房Utaro]2005年4月8日付「愛・地球博―スペイン館とフランス館」より)。
【破壊される地球を憂う】
スペイン館
 写真にあるカラフルな六角形のブロックは、陶器製で「セロシア」という。建築家のアレハンドロ・サエラ・ポロ設計のスペイン館である。内外を遮断せずに、外光・外気を取り入れ、半風防にもなっている。スペイン館のテーマは、「人生のわざと叡智を分かち合う」。鉱山で作業する「ペティント・ロボット」の展示や、スペインの古典文学がユニークな方法で展示されている。
フランス館
 全天18メートルのキューブ・シアターでは、「傷ついた惑星・地球」の映像が15分間流れる。人類の文明社会における主義・主張の結果がもたらす、地球の“負の部分”について語られている。その他にも、「持続可能な開発」プランの提案、「温室効果ガス削減のための特別プログラム」などが展示されている。  人類の発展的な開発が、場合によっては不幸をもたらすという側面を、目をそらさずに直視し、それを克服していこうというのが、このパビリオンの力強い存在。小さなパビリオンだが、じっくりと展示物を見ていくことで、その理念が伝わってくる。

「私」の愛・地球博

※以下は、拙著旧ホームページのテクスト再録([ウェブ茶房Utaro]2005年4月8日付「『私』の愛・地球博」より)。

【2005年という時代を反映して】

《開会式》に関する箇条書き
 2005年3月24日、木曜日午後、『愛・地球博』の開会式をNHKハイビジョン放送で見る。会場は、EXPOドーム。ステージには菜の花が敷き詰められている。背景は白の色調。天皇陛下、内閣総理大臣の小泉首相、財団法人2005年日本国際博覧会協会会長の豊田章一郎氏の祝辞あり。紙吹雪が舞い、その紙吹雪には、菜の花の種が一粒ずつ封入されていたという。オーケストラの演奏、蝶々やテントウ虫、蟻などの可愛らしい虫の恰好をした子供たちのパフォーマンス、石川県輪島の和太鼓、クラシックバレエによる『火の鳥』。さらには、トウモロコシ一粒を栽培するのに、水がどれだけ必要かという寸劇、歌舞伎と狂言のコラボレーション寸劇、など。3部構成。
万博テーマに関する箇条書き
【自然】 1.人為によらないでこの世に存在する、すべての物や現象。森羅万象。天地万物。 2.人為によらない、そのもの本来の状態であること。天然。 【英知(叡知)】 1.すぐれて深い知恵、高い知性。 2.哲学で(最高の)認識能力。intelligenceの訳語。「英知」は代用表記。 ※『明鏡国語辞典』[初版](大修館書店) 【自然】 1.天体・山川草木・動物など、人間社会を取り巻くもの。〔狭義では人間(の営み)と対立し、広義では、人間(の所産)を含む〕 ※『新明解国語辞典』[第六版](三省堂) 【intelligence】 知能、知力;理解力、物わかりのよさ、聡明さ 【wisdom】 1.知恵、賢明さ 2.知識、学識、学問
ある一つの想念記
 人間には、全人類、全地球、全宇宙を支配しようという欲望=傲りがある。もし太陽系を越えた向こうにある、星々のうちの惑星人が、地球人とコンタクトをとろうとすれば、人間は「人」から「人」へという、地球では当たり前の伝達手段で、交渉を図るだろう。  しかし、もう一つの側面にある現実は、容赦ないものだ。人間は、この地球上の生物の、一つの種に過ぎないという現実である。そしてまた、この地球上の人類のように、こうした機能と外形を持ち合わせた人類というものが、太陽系外の惑星に存在するかどうかさえ疑問だ。もし全宇宙を支配しようとするならば…