櫻の園という時代〈二〉

※以下は、拙著旧ブログのテクスト再録([Kotto Blog]2011年7月17日付「櫻の園という時代〈2〉」より)。

【ビデオ版『櫻の園』】
 私が中学校の演劇部で目の当たりにした様々なエピソード、そして彼女ら女子生徒が醸し出す“演劇人”特有の変哲ぶりについては、感覚的にそれを知ることができ、そのほとんどすべてが、と言っていいほど、中原俊監督の映画『櫻の園』(1990年)の中で如実に描き出されていると思います(女子中学生と女子高生の違いはあるけれど)。

 この映画が当時受賞した映画賞を列記してみます。

●山路ふみ子賞〈映画賞〉
●報知映画賞〈最優秀作品賞〉
●毎日映画コンクール〈優秀作品賞、女優助演賞:つみきみほ〉
●ヨコハマ映画祭〈ベストテン1位、作品賞、監督賞、脚本賞、最優秀新人賞:中島ひろ子〉
●ゴールデンアロー賞〈映画賞〉
●キネマ旬報〈ベストワン、監督賞、脚本賞〉
●日本アカデミー賞〈優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞、優秀編集賞、新人俳優賞:中島ひろ子〉
●高崎映画祭〈最優秀作品賞、監督賞、新人賞:中島ひろ子〉

 映画賞を数々受賞している作品が、必ずしも「後世に残る素晴らしい映画である」と単純に価値を決めつけてしまうことはできない側面があるけれども、この『櫻の園』に関しては、文句なしにそれと比例した素晴らしい映画であると、私は断言できます。

 とある高校の演劇部公演(チェーホフ原作の「桜の園」の上演)が、学校を揺るがす風紀事件(それほど大事ではない)によってその開演が危ぶまれるという事態に陥って、演劇部員の面々は心理的に切迫した状況に追い込まれます。この間の、女子高校生いや女子演劇人ならではの、言動の感覚というものが、ある種のリアリズムに沿って丹念に描かれているのです。

 大まかにざっくりと言ってしまえば、この映画は主演の中島ひろ子さん、つみきみほさん、宮澤美保さんの3人の個性(そして大事なのはショパンの「前奏曲作品28 第7番イ長調」の音楽的なゆらめきのイメージ)によって映画の骨格ががっちりと固められ、それ以外の俳優のキャスティングでは到達できなかったであろう奇跡的な空気感を生んでいます。

 演劇部の現場においては、チェーホフの「桜の園」は隅に追いやられ、自己と関係他者の切迫した問題に囚われすぎ、やや演劇の本質的仕事はおざなりになってしまうという傾向――。こうした10代に多く見られる演劇人特有の言動を覗き見することができ、それがこの映画の白眉であると私は思いました。

 喜ばしいというべきか、残念というべきか、この『櫻の園』DVDは絶版状態で、中古DVDがかなり高額に落ち着いてしまっているようです。従って私は改めてこの映画を鑑賞するため、比較的安価な中古ビデオを買い求めました。どこか落ち着いた映画館で、ビスタサイズのこの映画をひっそりと観てみたい、というのが願いです。

 「秘密を抱えた『櫻の園』」はこちら

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