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3月, 2021の投稿を表示しています

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消えゆく写真

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【FUJIFILM X-T3で試し撮り。被写体はLEICA IIIc】  元日の午後、手持ちのカメラ(FUJIFILM X-T3、レンズはFUJINON XF18-55mm F2.8-4.0 R LM OIS)でアンティークと化したLEICA IIIc(レンズはCanon SERENAR 50mm F1.9)を被写体に試し撮りをおこなった。ここ数日間続いた日本海側の寒波の煽りで、関東地方は異常なほど冷え込み、ただただ日光が神々しく、温かく、優しさをも醸し出しているかのようで、直接光と間接光に包まれたアンティークの被写体は何か、その機械的な佇まいの中に、微睡んでいるようにも見えた。  しかし一方で、いずれ消えゆくかも知れないアンティークの宿命の儚さもまた、写真という風雅の物悲しさを表している。《所有》とは、実に悲しげな行為なのである。ともあれ、個人的なクラシック・カメラの思い出は尽きることがない。私の記憶は、およそ20年前のウェブへといざなわれる――。 ➤写真とカメラを教示したmas氏  20年前のインターネットがきわめて遠い事象となりつつある、コロナ禍を経た時代の流れ。世相流行の移ろいはともかく、社会生活全般の隔世を感じるのは、私だけであろうか。今こうしてブログに文章を書いていることも、自身のウェブサイトをいくつか構築し、音楽や映像や写真などのポートフォリオを細々と展開しているのも、およそ20年前より私淑していた、mas氏のウェブサイトをお手本にしたものなのである。インターネットとのかかわり方、その作法や流儀について、詫び寂の何たるかまでも教示されたように思える。  20年前、彼に倣ってクラシック・カメラ遍歴(別の鋭い言い方では「クラシック・カメラ・ウイルス」とも言う)にどっぷりと浸かり、写真とカメラによる悦楽の日々を送っていたあの頃が、ひどく懐かしい。  mas氏に関しては、昨年の 「思い出のmas氏―池袋のお馬さん」 やそれ以前に多くテクストを書き連ねているので、ここでは詳しく書かない。  今はネット上に現存していない、彼の旧ウェブサイト[mas camera classica]では、洒脱な文章でカメラや写真についてとくと語られていて、その内容に私も感心したのだった。一部をコピーしてテクストファイルとして記録していたのもとうに忘れ、それをPCのハードディスク内か

アイラ島憧憬―スコッチの源流

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【アイラのシングル・モルト・ウイスキー「ボウモア」12年もの】  旅そのものが敬遠され、その土地の文化の探訪や散策の醍醐味が失われる過渡期に今、差し掛かっているのかも知れない。危機的な状況ではある。いわゆるコロナ禍(COVID-19のパンデミック)の最中に、私はこれを書いている。  今、自前の インディペンデントの小型映画 を製作している関係で、そのストーリーの舞台となるニューヨーク市ブルックリンの街の風情を掌握するために、少々大袈裟に俯瞰してみるべきだと、アメリカ合衆国の植民地時代から建国、南北戦争から20世紀の世界大戦、さらには21世紀における政治史のディテールを網羅した文献を読み続けている。この強大な共和国の歴史を遡れば、その背後にあるのは言うまでもなく、スペインとイギリスである。私自身、少年時代はメディアの溢れる情報によってアメリカに憧憬を抱き、映画と酒においては、英国の風情にすこぶる憧れたものである。それらが私の規定的思念あるいは信念となり、もはや置き換えられぬもの、超えられぬものとしての、人生の大半におけるサブカルチャーそのものなのであった。  食うことと飲むこと、とりわけ酒を飲む――スコッチを飲むという心地良い“ふくよかな夜の時間帯”ともなれば、映画三昧ともなり、文学三昧ともなる。たまには、かつて愛した(もしかすると今も愛している)女性を思い浮かべることもあるだろう。  ヒッチコックで映画術を学び、ジョイスやオスカー・ワイルドで活字の美学に酔いしれたりもする。話をし始めたら、止まらなくなる。それら酩酊の源流であるスコットランドとアイルランドへの旅の思い(机上の旅に近い)は、コロナ禍でさらに実感が湧かなくなりつつも、空想が空想であるがゆえ、夜はさらに闇として深まるのである。  村上春樹氏の、スコットランドとアイルランドにおける《旅愁》の萌芽を、再び読み返してみたくなった――。酒の文化、とりわけウイスキーの醍醐味を味わいたければ、『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』(新潮文庫)を読むといい。 § 【村上春樹著『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』(新潮文庫)】  私はこの本を、もう何年にもわたって耽読している。スコッチを飲み、またはアイリッシュ・ウイスキーへの想いを馳せ、その空想を膨らませるのに最適な読み物なのだ。――今、私の片手には、ボウモ

昭和レトロ探究―健康器具ミラクルミー

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【昭和の健康器具「ミラクルミー」】  小学生の頃、コミック雑誌の広告から影響を受け、様々な通信教育やアイデア通販の玩具を注文したりしていたのが懐かしい。いわゆる昭和レトロスペクティヴの話題である。  昭和レトロ探究――。当ブログにおいては、2004年2月20日付の 「『モリ』ちくのう錠の謎の女性」 でまず当時のアイデア通販の記憶を詮索。ヒサヤ大黒堂、大杉製薬の「『モリ』ちくのう錠」の広告について触れている。2010年11月25日付の 「『月刊少年チャンピオン』のホビー通販」 では、昭和のアイデア通販(ホビー通販)の広告について記述。奇天烈な各々の玩具商品の広告テクストの妙味に酔いしれ、淡々と昭和レトロ探究に励んだ――。個人的に小学生の頃、そうしたコミック雑誌を買っていた学校近くの雑貨店については、 「小学館の学習雑誌の思い出と未来へのファンタジー」 でその面影を写真に残して紹介したこともあった。  敢えて述べてしまえば、昭和レトロ探究における通信教育やアイデア通販のカテゴリーの中で、究極的に私が関心を示しているのは、映画俳優ブルース・リーの「截拳道」(せっけんどう)と「詠春拳・ヌンチャク技法」というかつての通信教育である。当時私は後者の「詠春拳・ヌンチャク技法」をやっていたのであった――。このブルース・リーの通信教育に関しては、現時点でまだ十分な資料が揃っていない。したがって、いずれ資料が揃った暁には、当ブログでじっくりと紹介したいと考えている。そのブルース・リー云々を調べようとしていた矢先、例のアイデア通販の広告の中の、ある奇天烈な商品に目が止まったわけである。健康器具「ミラクルミー」だ。 § 【アイデア通販“めいこう”の広告より。中央に「ミラクルミー」】  今ここにその現物の「ミラクルミー」(MIRACLEMEE)がある(製造元・株式会社コトブキ、総発売元・株式会社ドレプ)。“PATENT・P”すなわち特許出願中(Patent pending)の標記も添えられている。コミック雑誌『月刊少年チャンピオン』1982年2月特大号の巻末に印刷されている、アイデア通販“めいこう”の広告には、このように掲載されている。 《ミラクルミー(ふしぎなくるみ) 勉強がすぐにいやになる人、中の磁気が指先より作用して頭脳に活力を与えます。作家、画家に愛用されている 1,480円》 (『

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