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4月, 2021の投稿を表示しています

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消えゆく写真

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【FUJIFILM X-T3で試し撮り。被写体はLEICA IIIc】  元日の午後、手持ちのカメラ(FUJIFILM X-T3、レンズはFUJINON XF18-55mm F2.8-4.0 R LM OIS)でアンティークと化したLEICA IIIc(レンズはCanon SERENAR 50mm F1.9)を被写体に試し撮りをおこなった。ここ数日間続いた日本海側の寒波の煽りで、関東地方は異常なほど冷え込み、ただただ日光が神々しく、温かく、優しさをも醸し出しているかのようで、直接光と間接光に包まれたアンティークの被写体は何か、その機械的な佇まいの中に、微睡んでいるようにも見えた。  しかし一方で、いずれ消えゆくかも知れないアンティークの宿命の儚さもまた、写真という風雅の物悲しさを表している。《所有》とは、実に悲しげな行為なのである。ともあれ、個人的なクラシック・カメラの思い出は尽きることがない。私の記憶は、およそ20年前のウェブへといざなわれる――。 ➤写真とカメラを教示したmas氏  20年前のインターネットがきわめて遠い事象となりつつある、コロナ禍を経た時代の流れ。世相流行の移ろいはともかく、社会生活全般の隔世を感じるのは、私だけであろうか。今こうしてブログに文章を書いていることも、自身のウェブサイトをいくつか構築し、音楽や映像や写真などのポートフォリオを細々と展開しているのも、およそ20年前より私淑していた、mas氏のウェブサイトをお手本にしたものなのである。インターネットとのかかわり方、その作法や流儀について、詫び寂の何たるかまでも教示されたように思える。  20年前、彼に倣ってクラシック・カメラ遍歴(別の鋭い言い方では「クラシック・カメラ・ウイルス」とも言う)にどっぷりと浸かり、写真とカメラによる悦楽の日々を送っていたあの頃が、ひどく懐かしい。  mas氏に関しては、昨年の 「思い出のmas氏―池袋のお馬さん」 やそれ以前に多くテクストを書き連ねているので、ここでは詳しく書かない。  今はネット上に現存していない、彼の旧ウェブサイト[mas camera classica]では、洒脱な文章でカメラや写真についてとくと語られていて、その内容に私も感心したのだった。一部をコピーしてテクストファイルとして記録していたのもとうに忘れ、それをPCのハードディスク内か

国連切手―世界保健デーと世界人権宣言

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【2018年発行の国連切手「世界保健デー」6種】  切手に関する話である。私が小学4年生の時のクラブ活動で“切手クラブ”に所属していたことは、当ブログ 「美しき色彩―沖縄切手」 と 「見返り美人のこと」 で既に書いた。生前の父が若い頃に蒐集していた切手のスクラップ・ブックを譲り受け、クラブの仲間と切手について語り合ったり、見せ合ったりしていたのが懐かしい。残念ながら、そのスクラップ・ブックは――今はもう無い。  そうした“小さな絵画”とも言える切手を、愛おしく思う瞬間というのは、子どもの頃の記憶の名残か、大人になっても時折湧き上がってくるものである。それなりに学んだ切手の知識が基礎となって、日々の中で遭遇する切手の図案の美しさに惚れ惚れすることが、年に何度かあったりする。図案の中の世界が目眩く想像を掻き立て、この“小さな絵画”の何たる素晴らしさ!――と私は、茫然としてしまうのであった。 ➤現代的なモチーフの「世界保健デー」6種  ついこの前、国連発行の切手「世界保健デー」6種(2018年発行)について調べているうちに、欲しくなって買い求めてしまった。いま、手元にその実物がある。実に現代的なデザインというべきか、カラフルな色彩とイラストレーションに富んだ明るい趣であり、どこかしら力強さが感じられる。そう、迷いのないメッセージは実に力強いものなのだ。毎年4月7日はWHO(世界保健機関)が定めた「世界保健デー」(“World Health Day”)で、これはそのキャンペーンに準じた国連切手なのである。  補足するけれど、2021年の「世界保健デー」 のテーマは、“健康格差”(health inequality)である。特に新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンが公平に行き渡るよう、WHOが世界各国に働きかけている。そもそも、“健康格差”の原因は、経済的な貧困であったり、社会的な不平等がもたらすものだ。これらを是正することが、全ての人々の健康を維持し、子ども達の未来にもつながるという強い理念。このことを忘れてはならないし、様々な国連切手を眺めることで、それぞれのメッセージに込められた理念を思い起こすことができる。 ➤蒐集しやすい国連切手  私が子どもの頃に読んだ切手関連の本、小学館入門百科シリーズ16、今井修著『切手収集と楽しみ方入門』(小学館・昭和46年初版、

寺山修司が語る音楽とエロス

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【1983年刊、サントリー音楽叢書③『エロス in Music』】  個人的にここしばらく文学や演劇に関しては、寺山修司に着目し、その周縁の人々や作品に没頭していたいと思った。ごく最近知り得たのは、寺山修司がエロス(肉欲から通ずる愛。性愛)について述べた言説である。寺山と民族音楽の造詣が深い小泉文夫とが、“対談”という形式で、音楽に係るエロスについてのディスカッションを編纂した、ある書籍の企画があった。1983年刊のサントリー音楽叢書③『エロス in Music』(サントリー音楽財団・TBSブリタニカ)である。  はじめにざっくりと、この本のシリーズ――サントリー音楽叢書――について解説しておく。1982年1月に、最初のサントリー音楽叢書①『オペラ 新しい舞台空間の創造』が刊行された。この本の主なトピックスとしては、ドナルド・キーン、山田洋次、大木正興らによる鼎談「オペラへの招待」や、坂東玉三郎と畑中良輔による対談「オペラVS.歌舞伎」など。同年7月には、第2弾となるサントリー音楽叢書②『1919~1938 音楽沸騰』が出る。2つの世界大戦に挟まれた時代の現代音楽をテーマとし、武満徹、諸井誠、山口昌男らによる鼎談「もうひとつの音楽を求めて」、柴田南雄と高階秀爾の対談「現代への投影」といった内容が盛り込まれている。  ところで詳しい経緯は分からないが、いくら調べてみても、1983年刊のサントリー音楽叢書③以降のシリーズは、見当たらないのである。どうもこのシリーズは、わずか2年の間のたった3冊の出版で打ち切りとなったようだ。  この事情を当て推量するならば、3冊目の『エロス in Music』の内容が、当時にしてはあまりにも、強烈かつ斬新すぎたのではないか――。しかし、その内容が決して的外れなものではなく、かなりエロスの本質に踏み込んだ、音楽との係わり合いについて多様な論客を結集した内容であったことは、言うまでもない。ちなみにこの本の表紙の画は、池田満寿夫氏の作品である。本中にも池田満寿夫と佐藤陽子の二人が、「音楽・絵画・エロス」と題し、随筆を寄稿している。 【本の巻頭を飾る対談「エロス in Music」の寺山修司】 ➽寺山修司とは何者か  では、サントリー音楽叢書③『エロス in Music』における寺山修司と小泉文夫の対談――“音楽の中のエロス”――に話を絞ろう。

ロシアケーキと美的な写真の関係

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【中山製菓のロシアケーキ】  先々月、たまたまいただいた 中山製菓 のロシアケーキ(クッキー)が美味しくて、記録に残そうと、つい興奮しながらiPhoneのカメラ・アプリのシャッターを押したのだった。私は甘いものに目がなく、甘いものは皆美しいと感じている。  そう言えば昔は――デジタルカメラがまだそれほど普及していなかった90年代末に遡れば――こんなふうに日常の中で、“今まさに自分が食べようとするもの”をわざわざ写真に収めようなどとは、決して考えなかった。だってそれを誰に見せようというのか――。  ましてや、銀塩カメラのフィルム(24枚撮りとか36枚撮り)を、全て撮り終えたのちにカメラ屋さんに持っていって、DPE(Development Printing Enlargement)で現像してもらい、数日後に焼き付けたプリントが出来上がるのに、いったいどれだけの手間がかかるというのか。その頃「写真を撮る」というのはまだ非日常的な、ちょっとした特別な行為であって、この手間暇に見合う被写体しか、写真は撮らなかったものなのである。  そうなると、“今まさに自分が食べようとするもの”をわざわざ記録しておこうなどという酔狂は、その後の手間暇を考えれば、すっかり興ざめてしまうものなのであった。しかし、今は違う。食べ物であろうと紙くずであろうと、見せたい相手が向こう側(例えば地球上のあちらこちら)にいたりするのである。デジタルカメラもしくはカメラ機能付きケータイを所有していれば、記録した写真はデジタルデータとなるのでいとも簡単に送信でき、InstagramであったりFacebookであったりTwitterなどに投稿し、その欲求なり要請なりが叶うという仕組みである。むろん、たいがいは自己満足の行為にすぎないのだが…。 § 【私淑するmas氏のブログ[mcc blog]】  今のところ、私が長年私淑するmas氏のブログ[mcc blog]( http://blog.livedoor.jp/masmccmmb/ )は現存しているようである(当ブログ 「ピッツァからジャズへ〈一〉」 参照)。その古いブログは、mas氏が自身の備忘録のために投稿した、おおむねスイーツ・レシピ集となっている。  mas氏のそれまでにおける“クラシック・カメラ偏愛”の兼ね合いもあって、彼は比較的、デジタルカメラに移行

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