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9月, 2021の投稿を表示しています

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消えゆく写真

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【FUJIFILM X-T3で試し撮り。被写体はLEICA IIIc】  元日の午後、手持ちのカメラ(FUJIFILM X-T3、レンズはFUJINON XF18-55mm F2.8-4.0 R LM OIS)でアンティークと化したLEICA IIIc(レンズはCanon SERENAR 50mm F1.9)を被写体に試し撮りをおこなった。ここ数日間続いた日本海側の寒波の煽りで、関東地方は異常なほど冷え込み、ただただ日光が神々しく、温かく、優しさをも醸し出しているかのようで、直接光と間接光に包まれたアンティークの被写体は何か、その機械的な佇まいの中に、微睡んでいるようにも見えた。  しかし一方で、いずれ消えゆくかも知れないアンティークの宿命の儚さもまた、写真という風雅の物悲しさを表している。《所有》とは、実に悲しげな行為なのである。ともあれ、個人的なクラシック・カメラの思い出は尽きることがない。私の記憶は、およそ20年前のウェブへといざなわれる――。 ➤写真とカメラを教示したmas氏  20年前のインターネットがきわめて遠い事象となりつつある、コロナ禍を経た時代の流れ。世相流行の移ろいはともかく、社会生活全般の隔世を感じるのは、私だけであろうか。今こうしてブログに文章を書いていることも、自身のウェブサイトをいくつか構築し、音楽や映像や写真などのポートフォリオを細々と展開しているのも、およそ20年前より私淑していた、mas氏のウェブサイトをお手本にしたものなのである。インターネットとのかかわり方、その作法や流儀について、詫び寂の何たるかまでも教示されたように思える。  20年前、彼に倣ってクラシック・カメラ遍歴(別の鋭い言い方では「クラシック・カメラ・ウイルス」とも言う)にどっぷりと浸かり、写真とカメラによる悦楽の日々を送っていたあの頃が、ひどく懐かしい。  mas氏に関しては、昨年の 「思い出のmas氏―池袋のお馬さん」 やそれ以前に多くテクストを書き連ねているので、ここでは詳しく書かない。  今はネット上に現存していない、彼の旧ウェブサイト[mas camera classica]では、洒脱な文章でカメラや写真についてとくと語られていて、その内容に私も感心したのだった。一部をコピーしてテクストファイルとして記録していたのもとうに忘れ、それをPCのハードディスク内か

アイリッシュ・ウイスキーとジョイスの話

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【世界最古の蒸留所が誇るアイリッシュ・ウイスキー「キルベガン」】  朝日新聞が毎月第1日曜日に発行する特別紙面[朝日新聞グローブ](GLOBE)のNo.245は、興味深いウイスキー特集だった。その紙面のトップページにあった写真に、思わず私は眼を奪われたのだ。それは、ウイスキー・グラスに注がれた琥珀色の液体が、揚々たる深い海と化し、そこに突き出た南極大陸の氷山を思わせる氷の塊の、なんとも美しい風景――。  この世に存在する桃源郷とは、そのようなものなのだろうか。写真の下に、それとなく村上春樹氏の言葉が添えられていた。 《あらゆる酒の中ではウィスキーのオン・ザ・ロックが視覚的にいちばん美しい》 (『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)』新潮文庫)。  私はしたたかにこのウイスキー特集を読んでから、ジェイムズ・ジョイス(James Joyce)の本を開いた。ウイスキーのオン・ザ・ロックがこの世で最も美しい酒の姿であるとするならば、ジョイスの小説は、男にとっても女にとっても、破廉恥で最も穢らわしい毛皮をはいだ自己の内面の姿を、目の前の鏡の中に見出す瞬間を与えてくれるものであり、その傍らに寄り添うウイスキーは、みすぼらしい本当の《私自身》と“親しい友”でいてくれる、最良の飲み物なのである。  ゆえに私は、心からウイスキーを愛している。 【[朝日新聞グローブ]No.245「ウイスキーの時間」】 ➤GLOBEの「ウイスキーの時間」  特別紙面のウイスキー特集のメインテーマは、「ウイスキーの時間」。コロナ禍で「家飲み」が増えたという。どの国においても、家族や友人知人と共にバーやレストランなどで酒を飲み交わす機会が減ったというわけだ。そんなご時世でも尚、ウイスキーは世界的なブームだそうである。むしろビールやワインとは違い、ウイスキーはもともと孤独を愛する人々が嗜む酒の代名詞であったから、「家飲み」の需要が底上げしたのかも知れない。  とは言いつつも、ウイスキーは近頃、ハイボールという飲み方でもたいへん愛されてきているから、女性が好んで“軽くウイスキーを飲む”という機会が増えているせいなのだろう。  紙面全体の内容を大雑把に要約すれば、スコッチの生まれ故郷以外の国でも――勿論日本も含まれる――新しいウイスキーが次々と誕生しているという。  ここでいう新しいウイスキーとは、伝

陳平さんのエロい『ユーモア・センス入門』

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【ついに手にしてしまった野末陳平著『ユーモア・センス入門 学校職場・家庭を笑わそう』】  その頃私は初代タイガーマスク(佐山聡)の大ファンで、新日本プロレスの試合を中継するテレビ番組「ワールドプロレスリング」(テレビ朝日系列)を毎週欠かさず観ていた。初代タイガーマスクがデビューしたのは1981年4月23日であるから、当時私は小学3年生になったばかりの頃ということになる。  その頃の新日本プロレスの試合をテレビで観ていると、リングサイドの椅子席に、眼鏡をかけた野末陳平氏が腰かけているのを、よく確認することがあった。プロレス愛好家の有名人――というファースト・インプレッションは次第に氷解していって、彼は歴とした政治家(当時は新自由クラブ所属の参議院議員)であるという認識を持つようになり、度々テレビやラジオで活躍する彼を見る機会があったのだ。  ところで野末氏については――それくらいの知識しかない。やはり、プロレス好きの有名タレントという印象が強く、あとは、個人的に本屋へ行くと、どういうわけか野末氏のヘンテコな著作本があちらこちらにあるなあ――といった謎めいた印象が付け加えられるだけで、好きとも嫌いともそういう感情を抱いたことは一度もなかった。  今、Wikipediaを参照すると、彼の本名は野末和彦といい、1932年生まれの静岡出身、早稲田の第一文学部東洋哲学科を卒業した後に、放送作家になられた云々が記してあって、つまり、政治家になる前はそういうことをしていたのだと、今さらながら初めて知ったわけである。  こうして私が小学生時代に入り浸っていた本屋さんでよく目にしていた、野末氏の数々のヘンテコな本を、いまとてつもなく読んでみたくなった――わけである。これは理屈を抜きにした、ちょっとした好奇心だ。あの頃は全く手に取って読むことさえなかった野末氏の本を、ちらりと今、ささやかに冒険してみたくなったのである。 ➤陳平さんのワニの本  その頃よく本屋さんで見わたしていたのが、KKベストセラーズの“ワニの本”シリーズであった。ここに今、シリーズ102の『ユーモア・センス入門 学校職場・家庭を笑わそう』がある。むろん著者は、野末陳平氏である。  初版が昭和43年ということで、意外も何も相当古いと思った。本の外見の体裁は実に慎ましやかに、しかも小綺麗なのである。当時私はまだ生まれていな

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